腰痛

腰痛とは?

 腰痛とは、「腰部に存在する疼痛」であり、腰部とは、「触知可能な最下端の肋骨と殿高溝の間の領域」と定義されています。腰痛を有する患者数はきわめて多く、日本人の有訴者率の中で、男性では第1位、女性では第2位を占めます。

有症期間は、発症からの期間で急性、亜急性、慢性と定義されます。3ヵ月以上持続する腰痛を慢性腰痛、4週間未満を急性腰痛、急性と慢性の間にあるもの、つまり4週間以上3ヵ月未満の腰痛を亜急性と定義されることが一般的です。

原因

 原因の明らかな腰痛では、脊椎由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性の5つに大別されます。原因の明らかではない腰痛で、下肢神経症状を伴わない腰痛の場合、その85%では病理学的な診断を正確に行うことは困難であると言われています。腫瘍、感染、外傷による脊椎疾患および神経症状を伴う脊椎疾患を鑑別することが重要です。

脊椎・神経に由来するもの

 先天異常や側弯症、腰椎分離症など主に成長に伴っておこるもの、変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変性すべり症など主に加齢により生ずるもの、腰椎骨折や捻挫などの外傷、カリエスや化膿性脊椎炎などの感染や炎症によるもの、転移癌などの腫瘍によるもの、筋肉によるもの(筋・筋膜腰痛症)、運動による筋肉痛などがあります。

内臓・血管・心因性に由来するもの

 解離性大動脈瘤などの血管の病気、尿管結石などの泌尿器の病気、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科の病気、胆嚢炎や十二指腸潰瘍などの消化器の病気によるものがあります。加えて身体表現性障害、統合失調などの精神疾患や精神的なストレスによる心理的な原因による場合もあります。

一般的な治療

 多様な原因があり、また病態により治療法が異なるため、正確な診断が重要です。必要に応じて徒手検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、骨シンチ、筋電図検査、血液・尿検査などを行います。

 特に安静にしていても痛みが軽くならない、しだいに悪化する、発熱している、下肢がしびれたり力が入らない、尿漏れがするなどの症状を伴っている場合は、放置したり自分で管理することは禁物で、すみやかに整形外科を受診されることをお勧めします。

 内服薬、ブロック注射療法、コルセットなどの装具療法、電気療法・牽引療法などの物理療法、手技療法、手術治療等があります。それぞれの病態により治療が異なりますので、専門家にご相談下さい。

なお、整形外科医が腰痛治療の適応と考えている物理療法は以下となります。(日整会誌75:211-241.2001)

腰痛(神経症状あり) 1位 牽引療法、2位 温熱療法、3位 電気療法、4位 マイクロ波療法

腰痛(神経症状なし) 1位 温熱療法、2位、牽引療法 3位 運動療法 4位 電気療法